つらかった分を喜びで返す神様【金光新聞】
先祖と同じ悩み抱え
まゆみさん(39)は、私が奉仕する金光教の教会に、6歳になる娘さんといつも仲良く参拝しています。
そのきっかけは、7年前に亡くなった、おばあさまのご葬儀でした。おばあさまは金光教の信奉者で、私は祭主をさせて頂いたため、まゆみさんを含めたご遺族と、たびたび言葉を交わすようになりました。その中で、教会は神様にお願いするだけでなく、誰にも言えない苦しい気持ちを吐き出す場所でもあると、伝えていました。すると、まゆみさんから「話を聞いてほしい」と連絡があり、教会に参拝してきたのです。
まゆみさんは結婚して7年間、子どもを授かれず、「今日も不妊治療があります。治療はつらいけれど、夫や両親のためにも頑張りたいです。でも、また駄目かと思うと…」と涙ながらに話してくれました。私は、かつてまゆみさんのご先祖が、不妊の悩みで金光教へ入信したことを思い出し、みたま様が、苦しむまゆみさんを教会に引き寄せたのだと思えました。
期待する心は伝わる
私はそのことをまゆみさんに伝え、「よく辛抱してこられましたね。今日からご先祖様のように、神様へ妊娠のお願いをしてみませんか」と話しました。まゆみさんは「妊娠を神様にお願いしようなんて考えたこともなかったです。私も、神様へお願いしてみます」と目を輝かせ、妊娠を願い、一緒に神様にご祈念をしました。帰り際、まゆみさんが「あまり期待せずに頑張りますね」と言いました。これまで7年間、期待して治療を頑張った分だけ、つらい思いをしてきたまゆみさんの正直な気持ちだったのでしょう。その時、私は「赤ちゃんは期待されていない中で頑張るのだろうか」と感じ、「無理を言うかもしれませんが、赤ちゃんの気持ちになって期待してあげてください。それが赤ちゃんの頑張りと神様のお働きにつながると思いますから」と伝えました。
「そうですよね、やっぱり期待しないとですよね」と、うなずくまゆみさんに、私は「この中には、たくさんの祈りが込められたお米が入っています。体調が優れない時や、気持ちがつらい時に頂いて(食べて)ください」と、ご神米(しんまい)を手渡しました。
喜びのガッツポーズ
まゆみさんの治療が再び始まりました。苦しい時は教会にお参りし、受精した卵子を体内に戻す日もお参りして、ご神米を頂いてから病院に向かいました。私は神様に、どんな結果でもまゆみさんのおかげになるようにとお願いしました。1週間後、まゆみさんは治療の結果を報告しに参ってきました。私は、彼女の神妙な表情を見て、「駄目だったか」と思ったその時、まゆみさんは涙をぼろぼろ流し、崩れ落ちるように「妊娠しました!やったー!」とガッツポーズしたのです。私も一緒になって泣きながら喜び合い、神様に妊娠できたお礼と、これから無事に成長させて頂けるよう、お願いしました。
やがて元気な女の子を出産したまゆみさんは、「つらかった分、神様、みたま様は喜びで返してくれました。妊娠は、たまたまだとは思えません。待ち遠しかったけれど、親の愛情や親になる大変さを学ばせてもらい、あのタイミングで良かったのだと思います」と振り返ります。
神様は、苦しむ氏子を決して見放さず、つらかった過去まで感謝できるほどのおかげを下さいます。そして、そのつらい時に寄り添い、居場所ともなるのが、金光教の教会なのです。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
「心に届く信心真話」2021年2月14日号掲載