【巻頭言】「 戦後80年を迎えて」

本教の平和観に関して、過去の資料を振り返ってみました。
平成3年3月1日、金光教平和活動センターが発表した「湾岸戦争に関するアピール」には、次のように記されています。
「金光教は、『天が下の者はみな、神の氏子である。天が下に他人はない』という金光教祖の教えに基づいて、すべての活動を行っております。私たちは、神の願いを受け、政治的信条、国籍、人種、宗教などの違いを超えて、人間の生命を重んじ、すべての人々が平和で豊かな生活が営めることを願って、その実現に取り組んでいます。(中略)
私たちは、日々、『総氏子身の上安全、世界真の平和』を祈り、『われひと共に助かる』ことを願って、信心生活に取り組んでおります。
金光教教主(金光鑑太郎様)は『人命は地球よりも重しその人命殺しあふ戦ひ失せしめ給へ』と詠まれていますが、私たちもその思いをいただき、平和への祈りを強めてまいりたいと思います」
また、平成7年に金光教本部教庁から発行された『戦争と平和―戦後五十年をむかえて―』には、当時の教監による次のような記述があります。
「戦時中本教は、国家存亡の危機であるとして、戦争に協力しました。(中略)
そうした戦争協力は、過去の教団がなしたこととはいえ、もとよりそれを過去の出来事として見るにとどめてはならず、そのことに対する責任は、現在の信奉者であるわれわれ自身が担わなければならないものであります。(中略)
今日、平和の問題は、たんに戦争がない状態を指すにとどまらず、生命の侵害、環境の破壊、人権の抑圧など、新たな争いを生み出すさまざまな問題とかかわってとらえられるようになってきております。教団としましても、世界真の平和実現への努力をなし続けていかなければなりません」
戦後80年を迎えた今、この内容を教務の継続性をもって受け継ぎ、取り組んでいきたいと考えます。
「世界の平和」と聞くと、強力なサーチライトで世界の闇を照らすようなイメージを抱くかもしれません。しかし、例えるなら、私たちの手元にあるのは一人ひとりが持つろうそく1本に過ぎません。そのろうそくで、自らの手元をしっかりと照らすとともに、その光を周りの人へと伝えていく――。そうすることで、わずかずつではありますが、平和の光が広がっていくのではないでしょうか。そして、その営みを繰り返していくことが大切だと思います。
この歩みは、これまでも本教において脈々と続けられてきました。そして、これからも続けさせていただきたいと願っています。
教務総長 橋本美智雄