カラスも人間も共に助かる道【金光新聞】
カラスだけが悪者?
「父ちゃん、これ読んで」と、4歳になる息子が絵本を持ってきました。読み進めるうちに、お話の中でカラスが町のごみをあさる場面が出てきました。それを見た息子が「家の近くに来るカラスさんも同じことしてるね」と言うので、私は、先日の出来事を思い出しました。
その日は朝から「カー、カー」と鳴き声が聞こえたので、「今日はごみの日だからカラスが来ているな」と思いました。しかし、いつにも増して騒がしいので外に出ると、そこには、数羽のカラスと、道路一面に散らかった生ごみが。「やられた!」と思いながら、慌ててごみを片付け始めました。遅れて外に出てきた妻と息子もびっくりし、まだカラスが飛んでいる中、3人で掃除をしました。
この時の記憶と絵本の場面が重なったのでしょう。息子は「ごみを散らかすカラスさんが悪いよね」と決め付けるように言いました。その言葉に、私ははっとしました。私も内心、カラスにいい気はしていませんでしたが、カラスだけを悪者にしてはいけないと思い、息子に「お父さんがお参りしている金光教の教会の先生は、 『信心する者は犬や猫にまで憎まれないようにせよ。また、犬や猫にまでも敵をつくるな』と、生き物に対して思いやりの心を持とうと教えてくれていたよ。人も困らず、カラスだけを悪者にしない方法がないか考えよう」と話しました。息子は「ふーん」とだけ返事をしましたが、私は大事なことに気付かせてもらえた気になりました。
広がる思いやりの輪
私の住む町内では、ごみ収集車が来るまでに家の前にごみ袋を出す決まりになっています。カラスは、ごみ袋が朝早くから出ている場所を覚えていて、早めにごみを出さざるを得ない人の家のごみ袋は毎回荒らされることになるのです。わが家の向かいの家がまさにそうなのですが、ご近所同士お互いさまだと思い、掃除を続けていました。
ある日の夕方、そのお向かいの阿部さんが「カラスに荒らされたごみを代わりに掃除して頂いたそうで、ありがとうございました」とお礼を言いに来てくれました。しかし、私が掃除をしていた朝の時間、この方は仕事に出ていたはずです。どうして知っているのか不思議に思いつつも、「こんな時はお互いさまですから。こちらもご迷惑をお掛けする時は、よろしくお願いします」と、伝えました。
数日後、その日もカラスに荒らされたごみを掃除していると、数軒隣の家の前で同じように掃除をしていた男性から「あんたもご苦労さま。カラスが多くて困るねえ」と声を掛けられました。なるほど、神様がこの人を通してお向かいの阿部さんに伝えてくださったのだと納得し、どんな時も神様は見てくださっているのだと実感しました。そして、町内の人たちが、思いやりを持って掃除をしていると知れたのも、うれしいことでした。
町内の皆で対策講じ
被害に遭っている人は当然、カラスのことを悪く言ってしまいます。私はその気持ちを理解しつつも、カラスが悪者にならずに済むように、ごみ収集車の時間に合わせてごみを出すことや、難しい場合はごみ袋にネットをかぶせることを提案し、町内の皆さんで気を付けるようにしています。それでも散らかされた時は、神様から道路掃除を仰せつかった気持ちで、喜んでさせてもらっています。
一方的にただ排除するのではなく、お互いが立ち行くように思いやりの心を忘れず、神様に祈りながら、信心実践として励みたいと思います。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。