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経験が育てる優しい心【金光新聞】

大泣きしながらおもちゃを外に

 教会家庭で生まれた私(37)は、教会長である父から「学校で勉強するのは、世のお役に立つ人になるためやぞ」と教えられて育ちました。
 結婚して3人の子どもを授かった今、私も父に教えられたように「世のお役に立つ人になってほしい」と願いながら子育てをしています。
 ある日、子どもとお風呂で一緒に遊ぼうと、アヒルのおもちゃを買ってきました。子どもの喜ぶ顔を楽しみにしていたのですが、そのおもちゃをお風呂に浮かべた途端、1歳の長男が大泣きして、おもちゃを湯船の外に出してしまうのです。私は、何が起こったのか分からず、少し落ち着いた頃に、もう一度湯船におもちゃを入れてみたのですが、やはり泣きながら、おもちゃを外に出してしまいました。
 その理由が全く分からず、不思議に思いましたが、そんなことがあって以来、おもちゃを湯船に浮かべられなくなりました。半年後、もう大丈夫かもしれないと思い、再びおもちゃを浮かべてみたのですが、その時も同じで、いよいよ心配になりました。

 翌日、教会でご祈念をしている時、ふと「息子が湯船におもちゃを入れるのを嫌がります。どうしてか分からず心配です。どうぞ教えてください」と、神様にお願いしてみたところ、その日のうちにその理由を分からせて頂きました。
 夕方、私が廊下に散らばっていたおもちゃの車を「危ないなあ」と思いながら、足で脇によけたところ、長男が血相を変えて怒ってきました。その姿を見て、長男がおもちゃを心から大切にしているのが伝わりました。
 そして、その夜、長男とお風呂に入り、もう一度おもちゃを浮かべると、やっぱり大泣きしながらおもちゃを外に出したのですが、その時長男が「怖い!」と言ったのです。その言葉を聞いて、以前、長男がお風呂で溺れかけたことがあったのを思い出しました。その時は、私がすぐに助けたのですが、長男は大泣きし、私にしがみついて離れませんでした。

このおもちゃは溺れないよ

 もしかしたら、長男は自分の大切なおもちゃが、溺れて苦しい思いをしていると思っているのではと思い、そのことを尋ねると、長男がうなずきました。そこで、「このおもちゃは溺れたりしないよ。水に強いように作られているから」と説明すると、安心した顔をして、この日からお風呂の中でも、おもちゃで遊んでくれるようになりました。
 私は、この経験から、二つのことを学びました。一つ目はお願いすることの大切さです。神様にお願いしたことから、長男がおもちゃを大切にしていることが見え、問題が解決していきました。神
様にお願いをすることで、おかげを受ける受け物ができていくのだと分からせて頂きました。二つ目に、長男は自分の溺れた経験から、同じように苦しんでいると感じると、「助けたい」という思いやりの心が生まれているのだと感じました。

 長男の心の成長を、親として間近で見せて頂く中で、人や物を思いやる心や、お役に立たせてもらいたいという心が育っていく根本には、自らの失敗や難儀の体験も深く関わっていて、無駄なことではないのだと気付かせて頂きました。
 これからも、いろいろな経験の中で心を磨き、世のお役に立つ人にならせてもらえるよう、家族で信心の稽古に励みたいと思います。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

「心に届く信心真話」2020年3月22日号掲載

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タグ: 文字, 信心真話, 金光新聞,