メインコンテンツにスキップ

【巻頭言】そうやって、世界も、平和にならないですかね

アイキャッチ画像

「タイ焼きをキッチリ『半分こ』できる?」

『おいハンサム‼2』というドラマ(第5回)を見て、思わずうなってしまいました。

いまも、パレスチナ・ガザ地区への攻撃が続いています。それに関わって、9・11テロ後に出たアモス・オズの本(『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』)を読んだこともあり、このドラマシーンが強く印象に残ったのです。

少し、オズの本に触れてから、お話を進めたいと思います。

パレスチナとイスラエルの争いは、「宗教間の対立」とか、「文明の衝突」と理解されがちです。でも彼は、断言します。これは、決して「宗教戦争ではありません」と。「どんな目的であれ、その目的のためならどんな手段をとってもいいと考える者たちと、一般のわたしたち、つまり生きること、あるいは命がいちばん大切で、命を手段として使おうなどとはさらさら考えない者とのあいだの争いなのです」。

これには、二つの民族が、同じようにたどった悲しい歴史が関わっています。ユダヤ人がヨーロッパ諸国で強い迫害に遭ったように、パレスチナ人も、別のアラブ諸国で暮らしていた時、他のアラブ一族から屈辱的な仕打ちに遭い、迫害されました。そんな彼らは、パレスチナだけがすがれる場所だと思い知るのです。

オズは訴えます。これは、「宗教戦争でもないし、文化の争いでも、二つの異なる伝統の不和でもない。この家は誰のものかという、ただの不動産争いなのです。だからこれは解決可能だと私は信じています」

この言葉もあって、私には〝タイ焼き半分こ〟のシーンが心に響いたのです。

由香、里香、美香の三姉妹が話し合っています。その時次女の里香は、同じビルで働く原さんと、〝タイ焼き半分こ〟をしたことが、妙に気になっていました。

あんこは頭の方に詰まっているし、だからって、上下で半分にするのも、広げて〝タイの開き〟にするのも、「何か、やだな」と長女の由香。里香も「タイ焼きの完璧な半分こって、絶対に無理だと思ってたんだ」と応じます。すると三女の美香が、すかさず返します。「でも、分け合うっていいよね。一人でできないことだし」。他の二人は、思わず納得。

話し合いの後、里香は、タイ焼きを分けた時のことを思い返します。じゃんけんで勝った原さんは、二つに割ってこう言いました。「食べたい方、選んで」。驚く里香に、原さんが…

こういうのって、完璧に半分って、絶対、無理じゃないですか。(里香:はい)だから、分ける人と選ぶ人を、別にしたらいいんですね。

じゃんけんで勝った方が分けて、負けた方が、先に選ぶとか。負けた人が分けて、勝った人が選ぶとか。分ける人は、できるだけ、ちゃんと分けようとするし、選ぶ方は、納得する方を食べられる。それが一番、お互い、嫌な思いしないでしょ。

そうやって、世界も、平和にならないですかね。

最後に里香は、つぶやきます。「全然、半分こじゃないのに、確かに、半分こだった」。

オズの言う「『だれの土地か?』という痛みを伴う問題」を、〝タイ焼き半分こ〟につなげるのは、確かに短絡的かもしれません。でも、対立をあおる、危険な捉え方よりも、ずっと大事じゃないかと思うのです。

そんな私には、大西秀さんが伝える教祖御理解も重なってきます。「そうやって、世界も、平和にならないですかね」って。

どんな物でも、よい物は、人に融通してやれば人が喜ぶ。それで徳を受ける。人にやるのでも、自分によい物を残しておくようなことではいけない。人に物をやる時には、たとえ前かけ一枚やるのでも、よい方を人にやり、悪い方を自分が使うようにせよ。

教学研究所長 大林 浩治

投稿日: / 更新日:

タグ: 金光教報, 巻頭言, 文字,