【巻頭言】広前(ここ)に神が生まれる
金光教報 11月号 巻頭言
サクラメントに行かせていただき間もないころ、初参拝された女性がお結界へ真っすぐやってきて、「昨日、兄がお参りして、母の病からの回復を願ったと聞きました。母はいまだに意識が戻りません。医者からは諦めるように言われました。でも、いま母に死なれたら私は一生親孝行ができないままになります」と目に涙をいっぱいためて訴えかけます。その必死さに動かされた私は、エンジン全開で、ご神前に向かいました。すると、彼女の母の死がすぐそこに迫っていると思え、「どうしよう。意識不明の彼女の母に『理解申す』こともできない。間に合わない」と思った次の瞬間でした。思わず「サクラメントの金光大神が、天地金乃神様、あなた様にお願い申し上げます」と口走っていました。その時、心に頂いた「三日」という言葉どおりに、彼女の母は三日後に意識が戻り退院できました。願い主と取次者がひとつになって、神様に向かい、金光大神様が広前に立ち現れたのでしょう。
現教主金光様は、広前部長であられたとき「グローバルに考えてローカルに活動する」という言葉を、「いま自分にできることをする、しかしその視野は広く持つ」と捉え直され、大いなる天地の中で、自分にできること、それは、「今月今日
私が、信心させていただきます」。これしかないと表白されています。このお言葉から「身代わりに神がさする」と言われた教祖様のお心に迫ろうとされる金光様の、究極のご覚悟とご決意が伝わってきます。
かつて「その方は小さいことばかり考えているが、此方は、世界をこのお道で包み回すようなおかげがいただきたいと思っているのである」、「わが身、わが一家を草紙(練習帳)にして、神様のおかげを受けて人を助けよ」と言われ、後に乙島の金神様と言われるようになった国枝三五郎さんは、教祖様の、「信心せよ。やがて、金神様と言われるようになるぞ」との仰せに対して、「信心しますとも。あなたは目にも見えない的をねらってお当てなさった。私はあなたという的があるからは信心します」と申し上げ、おかげを頂かれたと伝えています。
国枝さんが、「目にも見えない的をねらってお当てなさった」と、教祖様の信心のあられようを表現され、「私はあなたという的がある」と言われたのと同じように、無的の的に向かって、「今月今日 私が、信心させていただきます」と仰せになっておられる金光様を的として、金光様とひとつ心で、教祖様が願われた「世界をこのお道で包み回すおかげをいただ」いてまいりましょう。神が生まれる広前で。