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先生の祈り感じ仕事を前向きに

ご祈念しとるからな

 10年ほど前、私(42)は地元を離れて新しい仕事に就きました。出発前には、幼い頃からお参りし、成長を見守ってくれていた金光教の先生が、「あんたのことは、いつもご祈念しとるからな」と言って送り出してくれました。
 新たな仕事は、会社の定期刊行物を作る業務で、毎日文章を書くことが求められました。全く経験のない仕事で戸惑いの連続でしたが、厳しくも優しい先輩たちに教えてもらいながら、少しずつ仕事を覚えていきました。
 私は、出勤前には毎日、自宅にお祭りしている神様に、仕事が順調に進むようお祈りをします。教会には、時折電話をかけて、神様へのお願いや近況をお届けします。教会の先生は、いつも私の話をじっくり聞いてくださり、電話を切る際に必ず「ご祈念しとるからな」と言ってくれました。
 そうして1年半ほどが過ぎた頃です。頼りにしていた先輩たちが立て続けに退職し、先輩が担っていた業務の幾つかが、私に回ってきたのです。内容は、当時の私にはどれもレベルが高く、正直、「困ったなあ、大変や」という気持ちでした。能力も経験も追い付かない私は、上司に教わりながら、「まずは目の前の仕事を一つ一つ、確実に仕上げていこう」と、気持ちを切り替えました。

私を変える祈りの力

 でも、現実は思い描くようにはかどりません。だんだん仕事が遅れ気味になり、締め切りの日が近づいてくると、プレッシャーで焦りばかりが先立ちます。神様にお願いする時の気持ちも、願うというより、たまらない思いを訴えるような日が続きました。
 ある朝も、焦る気持ちのままに、出勤前のご祈念をしていました。すると、ふっと教会の先生の声で、いつもの「ご祈念しとるからな」という言葉が、私の頭の中に聞こえてきたのです。そして、先生や家族、お世話になっている人たちの顔が次々に浮かんできて、私の心に、「みんな、私の成長や幸せを祈ってくれているんだろうなあ」という思いが込み上げました。
 すると不思議なことに、さっきまでのたまらない気持ちが、すうっと引いて心が軽くなり、「よし、今日も頑張ってみよう」と前向きな気持ちが湧いてきたのです。その日から、驚くほど仕事がはかどり始め、一つ一つの仕事を良い形で仕上げることができました。
 私はこの体験から、祈りの持つ力を知りました。祈りと言っても、さまざまなものがあります。中には「祈ったからどうなるんだ」とか、「意味なんてないだろう」と思う人もいるかもしれません。私にしても、急に能力が上がったわけでも、状況が変わったわけでもありません。しかし、「教会の先生をはじめ、みんなから祈られている」という実感は、私の心を変えてくれました。

必ず道が付いていく

 今振り返ると、あの時頭に浮かんできた先生の言葉は、ただ困り続けるだけの私を見かねて、神様が思い出させてくれたものだと思います。
 今でも、生活や仕事で難しいことが起きると、「困ったなあ」と頭を抱えますが、10年前と違うのは、心配事に引っ張られてしまうだけではなく、「教会の先生が祈ってくれている。その中で起きてきたことだ。必ず道が付いていく」と、踏みとどまれるようになってきたことです。
 今、私は教会の先生のように、関わりある人たちを祈ることを始めています。祈られているありがたさを忘れず、祈りの輪を広げていきたいと願っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

「心に届く信心真話」2022年3月9日号掲載

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タグ: 文字, 金光新聞, 信心真話,