人の助かりを共通の願いに【金光新聞】
他宗教と連帯し、社会の困難と関わる
「世界が平和でありますように…」。宗教者は宗派を問わず、祈りの世界を生きる。しかし、その「祈り」の中身に反するような困難が、毎日どこかで起きている。私たち宗教人は、そのことにどのような形で関わっていくことができるだろうか。
平成26年、私の住んでいる三重県名張市に「名張市宗教者連帯会」という組織が結成された。本会は「宗教人として夢と希望、幸せが実感できる社会づくりを目指し、人類の平和と福祉、教育の向上のため、宗教教団等の枠を超えて、相互理解と連帯の関係を深め、地域宗教としての役割を果たす」との願いを掲げている。
私は、本会の代表を務めている真言宗寺院の住職とご縁を頂き、「金光教の教師として、この町のお役に立てるなら」という願いのもと、発会当初から参加している。
現在、本会には市内21団体の神社、寺院、キリスト教などの諸教団の宗教者が加入し、名張市の後援と、市内23企業の協賛を得ており、活動内容として、講演会や平和の祈りと集いの実施、人権問題研究会、自殺対策啓発活動、少年サポートパトロールを行うなど、宗教者の祈りを実際に体現しようとした、目に見える活動を地域で行っている。
昨年、代表の住職から、発会5周年記念総会での講演会を企画するよう依頼された。そこで、「大阪希望館」を立ち上げ、大都市圏の生活困窮者へ手を差し伸べる活動をしている、金光教教師の渡辺順一先生(大阪府羽曳野教会長)を講師に招き、「心の時代─宗教が果たす役割」というテーマで、講演会を開催させて頂いた。他宗教の牧師・神主・僧侶・教師や信徒が多数来聴した。
講演会は、新聞の地域面やタウン誌で事前に告知され、講演会の内容も地元のケーブルテレビなどで報道された。地元限定とはいえ、「金光教」という名前と名張教会の存在が多くの人に知ってもらえ、とても有意義な催しとなった。
講演後、渡辺先生は「名張市のような規模(人口約7万8千人)の町で、他宗教との関わりを持ちながら、地域のために何かをやろうとする仕掛けがあるのは珍しく、貴重。宗教者が連帯して、地域に貢献していることを発信し続け、その活動の中で、金光教として役割をしっかり担うことが大切」と話してくださった。
私は、活動を通して「宗教者は地域の中で何をしているのか、どんなお役を担っているのか」を人々に認知してもらえたら、宗教に対する信頼と安心感が得られるはずだ、と宗教者の連帯に可能性を感じている。
代表の住職に、「人が助かりさえすればそれでよい」という教祖様のみ教えを紹介したことがあるが、その方は「金光教さんはそういう考えの宗教なんですね。思想や信条を超えて、現代社会の矛盾や不合理を、乗り越えてゆかねばなりません。そのためには、各宗教の教義や考えをお互いに学び合い、いいものを構築していくことが大切だと思います」と
話してくれた。私はこの話を聞いて、「人が助かりさえすれば」という願いは、宗教者共通の究極のものだと確信した。
その願いに基づいた、地域に向けた活動をしたいと思っていても、単一の教会だけでは、市や企業からの協賛を得ることは難しいだろうし、警戒されることもある。しかし、他宗教と連帯することで、それらの問題は解決する。地域住民との垣根も低くなり、地域社会に宗教の働きが必要とされてくるのだと思う。このような活動は将来、地域にとっても、金光教にとっても必ず生きた働きになると信じている。
「フラッシュナウ」金光新聞2019年7月28日号掲載