人を一人助ければ一人の神【金光新聞】
ご縁ある人々の助かりを祈る
キャリアコンサルタントという職業柄、大勢の話を聞かせてもらっている。自分の進むべき方向に迷っている、あるいは決断の後押しが欲しいなど、世の中は、話を聴いてほしいと望む人であふれている。相手の気持ちに寄り添い、祈りながら長い時間をかけて話を聴くという営みに、教祖様のお姿を思わずにはいられない。
「話を聴いてほしいのですが、お時間ありますか?」とメールが届き、その後、約束した時間に電話をかけてこられる男性がいる。
1年に1度か2度。毎回1時間から1時間半ほど話を聴かせて頂く。こうしたやりとりが、8年ほど続いている。
最初はひたすら話を聴く。男性は、前回の電話からその日までの経過を、一つ一つ説明していく。身辺での出来事、考えていること、疑問に思うこと、迷っていること、ある程度自分の中で方向性を決めていること、なかなか踏み切れずにいることを話していく中で、頭の中が整理されていき、自己肯定感を得られる時が来る。それが、彼にとって新たなスタートラインに立った瞬間なのだと思う。
私がこの方と出会ったきっかけは、ある企業の健康診断で行うメンタルチェックの場だった。応対する数名のカウンセラーの一人だった私のところに振り分けられ、その年、その日、その時間に、神様が巡り合わせてくださったのだ。
メンタルチェックは数分で終わるが、その方はいろいろと疑問に思っていることを尋ねてこられた。限られた時間では話し足りないようなので、時間と場所を変えてゆっくり話を聴く機会を持ち、その後も話を聴かせてもらうようになった。
毎回話を聴く際、この人の主訴(話したいことの本筋)は何かと考え、本人の思う方向への後押しが必要であるか、または、別の道筋を一緒に見いだすのが良いのか、と祈りながら話を聴いていく。
その人のことを受け止め、話す内容から場面を想像し、心に寄り添うことができるかどうかが重要だ。本人の思う通りの方向に向かえば納得もするが、そうではない方向に行きそうになると、戸惑いを見せることもある。だが、とにかく話を聴いていくうち、新たな方向性が見えてくれば、心の「思い変え」ができる。そうすると、この人の心 (魂) が生き生きと輝き、 神様もお喜びになる瞬間が訪れたのではないかと感じるのである。
教祖様は、お参りに来られた人々の話を、聴いて聴いて聴き抜いていかれた。
時には数時間、数日間かけて、その人の話を聴いておられたのではないかと思う。そして、その内容を神様に取次がれ、状況に添った教えを授けていかれたのだろう。
そうやっておかげを頂いた人々は、自分の周囲の人を教祖様に引き合わせたいとの思いを強くしていった。その結果、より多くの人々が、教祖様に教えを頂き、神様のおかげを頂いて助かっていったのだ。
金光教の信心を伝えることは、それほど大層な力を必要とはしない。人の助かりを願う上で大切なことは、自分の周りにいて、日々接している人たちの心に寄り添うことからだと思っている。
教祖様は、「人を一人助ければ、一人の神である。十人助ければ、十人の神である」との教えを残しておられる。1人が1人助ければ2人になり、2人がそれぞれに1人ずつ寄り添えば4人になる。次には8人。さらには16人。1人の助かりを願い、その相手が助かることで、神様がお喜びになる。すてきな連鎖が広がっていくことで、すてきな神様を増やしていきたいと願っている。
「フラッシュナウ」金光新聞2019年8月11日号掲載