「特性を理解し合い助け合う」【金光新聞】
「発達障害」まずは知ることから
高校生が気軽に悩みを話せる場づくりを目的に、学校内に設けられた「居場所カフェ」のスタッフをしていて、気付いたことがある。
それは「発達障害」について知ることの重要さだ。その特性を互いに理解し、発達途上の人間同士として、祈り合い、育ち合って、一緒に生きていく大切さを痛感している。
私たちが深刻な話をしていても、会話に割り込んできて自分の好きな芸能人の話を延々としてしまう。人との距離感が近くて、それほど仲良くないのに、すぐなれなれしくしてしまい、周りから浮いてしまう。
これらは、私たちが高校生居場所カフェで、いつも対応に気を付けている生徒の代表的な特徴といえる。背景には「発達障害」がある。
発達障害には、代表的な幾つかのタイプがあるといわれている。 他人の気持ちを察するのが難しく、対人関係を築きにくい。言葉の発達が遅れる。興味関心の偏りや行動にこだわりを持ち、固執する(広汎性発達障害=自閉症、アスペルガー症候群)。また、何かに集中することが難しく、落ち着きがない。思い付いたら行動に移
してしまう(注意欠陥多動性障害/ADHD)や、読み書き計算や特定のことが極端に苦手(学習障害/LD)などもある。
これらは脳の機能的な障害から生じるとされ、生まれつきのものだが、明確にタイプ分けするのは難しい。それぞれの特徴が少しずつ重なり合っていたり、年齢や環境で目立つ特徴も違うからだ。モデルの栗原類さんや俳優のトム・クルーズさんも、発達障害を抱えていることを公表している。
発達障害のある子どもを持つ母親から話を聞かせてもらったことがある。その方は、幼いわが子がなかなか言葉を発するようにならないので、育児が間違っていたのか、自分の愛情不足だろうかとすごく悩んでいたが、発達障害と診断され、ショックを受けた一方で「心底ほっとした」という。母親はその後、子どもが適切な支援を受けられるよう奔走しつつ、療育に尽力してきたとのことだった。
当人にとっても、先に挙げた特徴は生きづらさや悩みに直接結び付いている。周りの理解がなければ、「困った人」として爪はじきにされたり、「何でこんなことができないのか」と一方的に責められかねず、不登校や引きこもりになるケースも珍しくない。
発達障害者の就労支援に携わっている方が、「私の所に来る時には相当傷ついている。もっと早い段階で周囲に理解者がいればと思う」と訴えていた。発達障害の特徴を理解した上で、その人のできないことや短所を、いかに特性として受け止めていくかが重要だが、これは障害があろうがなかろうが、人間に向き合う上での基本
的な態度だと思う。
私自身、対応に苦慮することも多いが、カフェに来るそうした生徒たちに救われたことがある。ある女子生徒は、人との距離感が近い故に、私がカフェのスタッフになったばかりの頃、すぐに親しくしてくれ、緊張感を解いてくれた。また、あるクイズイベントを企画した時には、さまざまなことに強いこだわりを示す傾向のある男子生徒がアドバイスをくれたことで、誰もが参加しやすいイベントになった。
祖様のみ教えに「五本の指が、もし、みな同じ長さでそろっていては、物をつかむことができない。長いのや短いのがあるので、物がつかめる。それぞれ性格が違うので、お役に立てるのである」とある。それぞれの特性を互いに理解し、磨き合うことで、よりよい世の中にしていくことができると信じている。
私自身も不注意で忘れ物が多く、玄関を出た後に何度も取りに帰る。それぞれ足りたり足りなかったり、成長の途上にある人間同士。祈り合い、助け合って一緒に前へ歩いていきたい。
的場聡行(大阪府上野芝教会)