手術できるのもおかげ【金光新聞】
できれば手術はしたくない
賢三さん(68)は毎朝、仕事へ出る前に、必ず教会に参拝しています。
賢三さんの奥さんも普段から仕事の合間に時間を見つけては教会に参拝します。また、近所に嫁いだ2人の娘さんにも教会参拝を勧め、今では娘さんの夫やまだよちよち歩きのお孫さんまで参拝するようになりました。お孫さんは賢三さんと一緒にお参りできる時はことさらうれしそうで、ご神前やお結界で深々と頭を下げてお礼をします。教会に参拝する賢三さんの気持ちが家族の皆さんにそのまま伝わっているように感じます。
ある日、賢三さんは急に歩けなくなりました。そして尿も出にくくなったので病院で診てもらうと、前立腺の検査のため、入院することになりました。賢三さんの入院中は奥さんが毎日参拝しました。そして、2人の娘婿さんは、娘さんが賢三さんのお世話をできるようにと、子どもの世話や車での送迎をしてくれたり、いろいろと協力してくれたそうです。
そして、検査の結果、前立腺にがんがあることが分かり、患部を切除することになりました。
すぐに賢三さんに代わって教会へ参拝した奥さんがお取次を願うと、「手術を受けさせてもらえるのも神様のおかげですよ」という言葉を、教会の先生から頂きました。
病院へ戻った奥さんが先生の言葉そのままを賢三さんに伝えたところ、賢三さんは「そうか」と言いながら、 内心では「できることなら手術しないでおかげを頂きたい」と思っていたようです。
そして、いよいよ手術日が間近となったある日、主治医から最終の説明を聞くことになりました。賢三さんは、 「手術したくないけど、やっぱりせないかんのか」と、少し不満に思いながら、説明を受ける部屋の前で待っていると、いよいよ次が賢三さんの番になりました。しかし、賢三さんより後の番号の人が先に呼ばれてカーテンの中へ入っていきました。「あれ?」と思っていると、血圧や血糖値が心配な状態で、場合によっては手術を見合わせようか、という主治医の声が聞こえてきたのです。そんなこともあるんだと思っていると、今度は賢三さんが呼ばれました。
知らず知らずのおかげ
主治医の話では、患部の他には異常がなく、手術しても差し支えがないとのことでした。そして「病歴にはなかったですが、心筋梗塞の跡が見つかりました」と言われて、賢三さんはびっくりしてしまいました。全く身に覚えがないことで、知らず知らずのうちにおかげをこうむっていたことを知って、教会の先生から言われた「手術を受けさせてもらえるのも神様のおかげですよ」ということを実感したのでした。
賢三さんは差し障りのない体調で手術に臨めること、そして、わざわざ主治医の説明の順番を入れ替えてまで神様がこのことを自分に伝えてくださったこと、さらに病気が分かってからの家族の温かい心と行動を思い返しながら、心の底から神様にお礼を申しました。
手術は成功し、術後の経過も良好で、土日に外泊をもらうたびに、必ず教会にお参りしました。
そしてたまった仕事を済ませて病院へ戻り、食事もきちんと頂いてよく眠れるものですから、同室の人から「病院へ休養に来てるみたいや」と言われたそうです。
次々に良いように都合を頂き、賢三さんは、お参りするたびに新たなお礼が増えています。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています