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長生きしたプレゼント【金光新聞】

102歳で迎えた転機

 私の奉仕する教会に参拝していた小林タマノさんが亡くなって10年がたちます。享年106歳でした。私はタマノさんの生き方を通じて教えてもらったことがあります。
 タマノさんが入信したのは50歳の時です。教会の近所に住まいがあり、先代教会長とあいさつを交わすうちに、先代の人柄に引かれ、教会へ足を運ぶようになったそうです。そして63歳の時、夫が亡くなったのを機に金光教に改式しました。
 子どもがいなかったタマノさんは、夫の死後、一人暮らしを始めました。朝参拝とご祈念後のトイレと境内の掃除を欠かしたことがなく、明るい性格だったタマノさんは皆の人気者でした。
 90歳を越えてからも、近所の方やヘルパーさんのお世話になりながら、炊事や洗濯などは自分でしていました。そして、毎日シルバーカーを押して教会に参拝し、いつもお結界で「どうぞ元気に過ごせますように」とお願いしていました。
 100歳の誕生日には市からお祝いをしてもらい、教会にも参拝をし、市から頂いた記念品をご神前にお供えして、一緒にお礼のご祈念をしました。その時のタマノさんのうれし涙を今でも覚えています。

 ところが102歳を迎えた年、市の職員がタマノさんの家に来て、「一人暮らしをこれ以上続けることは何かと危ぶまれます。50キロ離れた場所ですが、老人ホームに入ってもらえないでしょうか」と、言われたのです。
 タマノさんはすぐに教会に参拝し、「この年で、これまでと全く違う環境で見知らぬ人と共同生活するのは心配です。そして何よりも教会へ参拝できなくなることが不安でたまりません」とお届けされました。タマノさんの気持ちが私には痛いほど伝わってきましたが、市役所の担当者の心配ももっともなことだと思いました。
 そこで私は、タマノさんに「長年、住み慣れた家を離れるのは寂しいですよね。でも、このことは長生きのおかげを頂いたからこそ出合った出来事です。老人ホームへのお誘いは長年の信心と長生きをしたことに対する神様からのプレゼントでしょう。ですから市役所の方が言われるように、この話を受けてみてはどうでしょう」と話しました。タマノさんは私の話を素直に聞き受けてくださり、1週間後、老人ホームへ入居しました。

みんなの見本になる生き方

 身寄りのないタマノさんが新しい環境で皆とうまくやっていけるのか心配だった私は、週に1度、施設を訪ねるようになりました。ところが、私の心配をよそに1カ月たつころには、タマノさんは他の入所者から慕われ、すっかり人気者になっていました。
 ある時、 私はタマノさんを担当するスタッフの方から、 「タマノさんがみんなから好かれるのは、信仰があるからだったんですね」と話し掛けられました。詳しく聞いてみると、タマノさんは食事を 「おいしい」 といつも喜んで残さずに食べ、洗濯物を受け取る時も、「きれいにしてくれてありがとう」と感謝の言葉を忘れたことがない、といったように、不平不足を言ったことがなく、そんなタマノさんのところへ自然と人が集まるようになったそうです。

 タマノさんが信心する中で身に付けたどんなことにも喜びを見いだし、感謝する生き方が周りにも広がっていったのだと感じました。タマノさんのそんな生き方を今も私はお手本にさせて頂いています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」金光新聞2016年11月27日号掲載)

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タグ: 文字, 信心真話, 金光新聞,