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元日の心 ─あけましておめでとうございます─

金光教報 「天地」1月号 巻頭言

 「信心は日々の改まりが第一じゃ。毎日、元日の心で暮らし、日が暮れたら大晦日と思い、夜が明けたら元日と思うて、日々うれしゅう暮らせば、家内に不和はない」とみ教えがある。
 これは信心をする者だけの教えではなく、私たちすべての人の暮らしにも当てはまることのように思える。例えば夫婦の間でのことや、親子の間でのこと、会社や学校での人間関係などに置き換えてみてもよいと思う。私たち人間は問題が起こると、心が乱れて自己中心的な方向に向かってしまう。この「改まり」とは、自分自身の行動や言動を見つめ直し、心から反省することから生まれる。そこから、お世話になっている人や物に対して感謝の心を持って接していく心が生まれてくるのだと思う。皆がそのような心持ちになり、日々取り組むことで不和がなくなり、一日一日が大切に過ごせるようになっていくのだと思う。
 ある女性のお話を紹介する。その方のご主人は、製薬会社の営業部に勤めている。自分の担当するエリアで、売り上げが次第次第に落ちて、上司との人間関係がうまくいかなくなった。ついには会社を辞めたい、と漏らすまでになり、気持ちが追いつめられていった。
 そういう状況であるから、ご主人の目覚めはたいへん悪い。目が覚めても、起き上がるのに30分近く時間がかかる。起きることができても、会社に行こうという意欲がわかない。だから、起きたがらないご主人に奥さんのイライラはつのり、毎朝けんかばかりしていたそうである。
 そんなご主人の姿を毎日見ていて、奥さんは、「主人に対して、私のできることは、一体なんであろうか」と思うようになった。その時、教会の先生から「目が覚めたら、夜休ませてもらったお布団を丁寧にたたんで、お礼を申しなさい」と言われたことを思い出した。それまで、教えは聞いて知っていたが、どこまで本気で、お世話になった布団にお礼が言えていた自分であろうか、と反省したそうである。
 奥さんは、「私が主人になり代わって、お世話になったお布団にお礼を言わせていただこう」と思い立ち、ご主人の分、自分の分と2人分、布団にお礼をするようになった。
 そのことが何か月続き、次第に、ご主人の目覚めがよくなり、自分で起きられるようになった。気持ちが充実し、仕事に対する意欲が以前にも増して出て来るようになった。奥さんは「以前のように、会社に行きたくないというようなことをまったく言わなくなった。気力が充実し、あのころと同じ人間かと、見まちがえるほどである」と、このようにお話しくださった。
 奥さん自身もそれまでは、何かと病気がちであったのが、いつしか心身共に健康なお身体に回復されたとのことである。
 その女性のお話を聞いて、神様のおかげを頂くには、人の立ち行きを願って、教えに沿って暮らしていくことが大切だと気付かされる。そうした姿勢になれば、生活の中にはっきりとしたおかげが目に見える形で現れてくるのである。
 私たちは、人様には、お世話になればお礼を言うが、衣食住一切には、お世話になっているにもかかわらず、なかなかお礼が言えない。
 前教主金光鑑太郎様は、「世話になるすべてに礼を言う心」とみ教え下さっている。天地のお恵みを頂いて生活できていることに気づき、そのことが「ありがたい」と思える心を大切にして欲しいと願われているのである。
 しかし、実際の生活の中では、何か問題が起こればすぐに不平不足の心が生まれ、「礼を言う心」どころではなくなってしまう。そういう状況になっても、少しずつでも手元のところから「お礼を土台」とした感謝の生活になるように、繰り返し取り組んでいくことが、「日々の改まり」につながり、家庭内でも不和のない生活が生まれてくるのだと思う。
 この「元日の心」を心に刻ませて頂き、ここからの一年を歩ませて頂きたいと願っている。

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