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時代に合った〝まちづくり〟【金光新聞】

未信奉者にご霊地を知ってもらおう

 最近、ご霊地の店舗を中心に、八つ波のご紋入りの提灯(ちょうちん)が軒下につるされていることにお気付きだろうか。夜になると提灯に灯が入り、ご霊地の町並みを明るく照らしている。これは、「明かりプロジェクト」という取り組みで、ご霊地らしさを模索していく中で3年前に始まった。少しずつ数が増え、今年度で60個となる見込みだ。

 「明かりプロジェクト」を企画したのは、平成18年に金光町、鴨方町、寄島町が合併し、浅口市となったことを機に組織された「まちづくり協議会」である。私がその会長にお使い頂いて3年が経過しようとしている。
 協議会では、 いろいろな事業を実施しながら方向性を模索しているが、昨年度は倉敷地域で実施されていた産業観光ツアーの受け入れを行い、 3回実施できた。午前中に他地域を観光した参加者が、 午後から半日間、大谷地域に滞在し、本部施設や門前町を巡った。30人弱の参加者だったが、平日のご霊地がにぎわう様子に感慨を覚えた。
 通常、行政が企画するツアーでは、宗教教団の関連施設の観光は敬遠されることが多い。しかし今回は、長年、産業観光ツアーを企画運営してきたアドバイザーの方が、「大谷地域は金光教の門前町として栄えた場所なのだから、金光教の施設を見学コースから外すのはあり得ない」と、行政担当者を説得してくれたおかげで実現できた。ご霊地のガイド役は、教祖生誕200年のお年柄に聖跡巡拝ガイドを目的に結成された「おもてなし」の皆さんにお願いした。
 3回のうちの1回は、実験的なイベントを実施することもできた。それは、ほとんどが大谷地区に足を踏み入れたこともない未信奉者の参加者に、本部広前でお取次を体験してもらおうというものだ。

 まず、大谷地区の紙店で「奉」の金封への水引掛けを体験してもらった後、本部境内に移動して金光教の歴史や施設、さらに参拝の仕方を説明した。そして、お広前に上がって拝礼した後、私が参加者に、「先ほど整えた金封で、お取次を体験してみましょう」と促したのである。
 内心は、どんな反応を示すだろうかとドキドキしながら、最初に私がお取次をさせて頂いたが、全員が後に続いて、それぞれが思いのままにお取次を頂き、ご神米をお下げ頂いた。その後でご神米入れをプレゼントすると、とても喜んでくれ、さっそくハンドバッグに付けてくださった方もいた。八つ波のご紋入りと無紋のものを用意したが、ほとんどの方がご紋入りのものを選択してくれたこともうれしかった。
 後日、大変好評だったという参加者からの感想を聞き、未信奉者であっても、見せ方を工夫していくことで金光教に共感してもらえる機会をつくっていけるのだと実感し、未信奉者にご霊地を観光してもらうことの意義をあらためて確認できた。

 お世話になった産業観光アドバイザーの方からは、「今は一般向けにやっているけれど、やるべきことは信奉者向けのツアーだよ」という言葉も頂いた。今後は、経験を蓄積しながら、のんびりとご霊地を堪能してもらえる信奉者向けのプランも模索したい。
 ある方は、「もともと田園地だった大谷は、金光教の誕生に伴って、門前町を形成したわけだから、その意味で『まちづくり』の先進事例だ」とおっしゃった。それを聞いて以来、原点に帰ることも「まちづくり」を考えていく上で重要な要素だと思うようになった。今までの歴史の綱をたぐり寄せ、時代に合ったものに作り直すことが重要だということなのだろう。

西規雄(本部在籍輔教/印刷会社経営)
(「フラッシュナウ」金光新聞 2015年12月20日号掲載)


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