全ては両親の祈りの中【金光新聞】
久しぶりに参拝
木村順子さん(45)は、若くしてご両親を相次いで病気で亡くしました。彼女は独身で、きょうだいもいないので、両親と死別してからはずっと一人暮らしをしてきました。
両親が亡くなった当初は、独りぼっちになった寂しさや不安に打ち沈む日もありましたが、月日がたつ中で、友達と食事や旅行に出掛けるなど、自由で気ままな毎日を送るようになっていました。そしていつしか、「ここまで誰の世話にもなっていないし、迷惑も掛けてこなかった。全て自分一人の力でやってきた」と思うようになりました。
ご両親が元気だったころは、連れられるようにしてよく教会に参拝していた順子さんでしたが、両親が亡くなると、次第に教会から足が遠のいていき、近年は年に2、3回、それも参拝だけすると、お結界でお取次を願うこともなく、すぐに帰ってしまいました。
私は、順子さんのそうした姿を、常に順子さんのことを祈っておられたご両親のことを思い出しながら、なんとも残念に思っていました。
2年前のある日、久しぶりに順子さんが参拝してきた時のことです。
この時、順子さんは普段になく、お結界に来て、「先生、私が毎日元気でいることって、ありがたいことですよね」と、話し始めたのです。
いつもとは違う彼女の行動に、私は何事があったのかと、その話に耳を傾けました。
順子さんには同じ職場に、年齢も同じで独身同士という女友達がいて、よく食事や旅行に出掛けていたそうです。その彼女が3カ月ほど前に突然亡くなったというのです。
亡くなる1カ月前には、彼女と一緒に食事をし、遅くまでおしゃべりをして、いつものように元気で別れました。そうして、そろそろまた電話でもしようと思っていた矢先に、心筋梗塞で急逝したという知らせが入ったのです。
順子さんはその知らせに大きなショックを受け、しばらく仕事が手に付かなかったといいます。
神様のおかげと両親の祈りの中で
それからしばらくして、彼女と旅行に行った時の写真を見ていたところ、急に「人の死は何てあっけないものなのだろう。人間は、自分のことさえ自分でどうすることもできない」と思ったそうです。そしてその時、ふと、生前のお母さんの言葉を思い出したというのです。
「母は事有るごとに、『神様にお願いしているから大丈夫』『神様のおかげだね』と、口癖のように言っていました。考えてみると、両親はいつも教会へ参拝しては、私のことを祈ってくれていました。きっと、みたま様になった今も、私のことを祈ってくれているに違いないと思うと涙があふれ出し、これまで自分一人でやってきたと思っていたことは、全て神様のおかげと両親の祈りの中でのことだったのではないかと思えてきました」。順子さんは、こう話してくれました。
その日を境に、順子さんから、「ありがとう」や「ありがたい」という言葉がよく聞かれるようになりました。また以前よりも表情が明るくなり、参拝も増え、大祭のご用までされるようになりました。
「毎日、何事もなく元気に過ごさせて頂いています。ありがとうございます。神様、みたま様にお礼申してください」。順子さんは参拝を通して、日々、お礼のけいこに取り組んでいます