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入院中も神様がご用に【金光新聞】

8カ月にわたる入院生活

 平成12年のことです。所用を終えて教会への帰路に就いた私(54)は、帰り着くなり、胸の苦しみに襲われ、七転八倒しました。病院に緊急搬送され、心筋梗塞と分かり、すぐに手術となりました。
 手術はうまくいき、経過も良好でしたが、術後の処置として胸骨部分に入れた金属がアレルギー反応を起こして化膿(かのう)したため、再度入院し、8回に分けての手術に臨みました。その間、心筋梗塞が再発して治療を行ったりと、8カ月にわたる入院生活を余儀なくされたのです。

 その入院中のことです。
 同じ病室に、70歳前後と思われる男性がいました。その方はホームレスで、私と同様に心筋梗塞で入院していました。
 私は同室の方に毎朝、「おはようございます」と声を掛けていましたが、その方だけは声を掛けるとカーテンを閉めてしまいます。それでも毎日、あいさつするようにしていると、「何で自分に関わるのだ」と言ってきたのです。
 私は、「病院の中では、同じ寝間着を着て、一つ屋根の下で同じ釜の飯を食べる仲間です。心穏やかに助け合いましょう」と言いました。
 それを機に、その方はだんだんと自分の身の上について話してくれるようになりました。10数年間、ホームレスを経験してきたことや、家族や会社、社会から捨てられたことなど、私はその方のつらい日々を聞かせて頂き、その都度、心に浮かんだ金光教の教えを分かりやすく話しました。
 その方は、先に退院したので、その後どうされているかと気に掛かっていました。そうしたある日、その方から入院中の私宛てに手紙が届きました。そこには、「病院でいろんな形でお世話してくれて、ありがとう」と書かれてあり、最後に「橋の下」とありました。

現代医学と宗教の共演ですね

 また、こんなこともありました。入院中、看護師さんたちのお世話になりながら、いろいろ話をするうちに、看護師さんから相談を受けるようにもなりました。患者さんの命を預かる看護師の仕事にはストレスも掛かり、家庭内での悩みも抱えていたりで、私はそれを聞かせてもらい、信心の観点から話をして、皆の立ち行きを祈らせてもらっていました。
 そうした様子を、日頃から目にしていたのでしょうか。ある日、診察に来られた医師から、「ありがとう」と言われたのです。私は驚いて、その訳を尋ねました。

 すると、その医師から、次のように言われたのです。
 「今まで、医者はどれだけ手術をしたかで優秀かどうかが評価されると思っていました。でも、あなたの態度や話を聞いているうちに、そうではない、と気付きました。一人の患者さんを手術するために、百人以上の人たちが関わっている。検査や手術に直接関わる人たちはもとより、手術するにもたくさんの器具や手助けが必要で、有形無形のいろいろな支えがあってのことだということを、あなたから教えられました。今では、手術前に患者さんに手を合わせて、『どうぞ、この患者さんが無事に家族の元へ帰られますように』と祈るようになりました」
 医師はそう言うと、続けて「まさに、現代医学と宗教の共演ですね」と言って、私に笑顔を見せました。
 私はその話を聞いて、入院生活の中でも神様がご用にお使いくださったのだと、とてもありがたく思いました。

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タグ: 文字, 信心真話, 金光新聞,